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 乳がんの薬物療法(1)
薬物療法の種類と必要性
 
乳がんの薬物療法には、ホルモン療法と化学療法(抗がん剤)があります。再発・転移をおさえて病気をなおすために、非常に重要な治療です。薬物療法といえば、副作用が心配ですが、むやみに怖がるのではなく、メリット・デメリットをよく考えて、治療法を選択しましょう。

そもそも、なぜ薬物療法をしなければならないか、というと乳がんは手術だけでは治らない場合があるからです。

手術は、乳房やリンパ節にあるがんを取り除く治療法であり、『局所治療』といいます。放射線治療も放射線があたる範囲に効果があり、同じく『局所治療』です。

一方、ホルモン剤や抗がん剤は、口から飲んだり、血管から点滴したりすることで、薬の成分が血液の流れに乗って、その効果が全身に行き渡ります。そのため、からだのどこかに隠れている、がん細胞をたたくことができるのです。薬物療法は、『全身治療』といわれます。

手術の時点では、超音波・CT・骨シンチ・PETなどのいろいろな検査をしても、ほとんどの人に異常は見られません。なぜ手術後に再発・転移する人がいるかというと、手術の時すでに検査では捕らえられないがん細胞が、血液やリンパの流れにのって全身にまわっていて、このがん細胞が時間の経過とともに増殖し、時間が経つと目に見える転移になるからです。

手術で、局所のがんを取り除くことはできます。しかし、血液やリンパの流れにのって全身にまわっているがん細胞の広がりは、外科医の手の届く範囲を超えているのです。そこで、全身に隠れているかもしれないがん細胞をたたく事のできる薬物療法の出番というわけです。

将来転移が出てこない可能性があるのに、なぜ薬物療法を受けなければならないのか、と考える人もおられるでしょう。その理由は、転移が目に見えるようになってからでは、いろいろな治療を行っても完全に治すことは、非常に困難だからです。

そして、手術の後に薬物療法を行うことで、転移をする危険性が減ること、また生存率も改善することが、30年くらい前から報告されはじめたからです。厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、転移してしまうと治らない。だからいま、しんどくてもホルモン治療や抗がん剤の治療をうけて、転移をふせぐことが重要なのです。

ただ、すべての人にこういった治療が必要というわけではありません。しこりが小さくリンパ節転移がなかったというような再発の危険性の低い人は、メリットがほとんどないのでおすすめしないことがあります。また、がんの病理組織検査の結果によっては、ホルモン治療だけをおすすめしたり、抗がん剤治療だけをおすすめする場合もあります。
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