病理検査による診断

病理検査について

しこりががんかどうかをはっきりさせるために最も重要な検査は、病理学的な検査、すなわち細胞診または組織診(針生検)です。マンモグラフィーや超音波検査などでは「はっきりとしない」という結果しか得られなかった場合でも、これら病理学的な検査の結果で「悪性」または「がん」という診断がなされた場合には、これを最終的な根拠として手術を行います。

ただし、検査でとれるしこりのサンプル(組織)の量はごく限られたものとなります。しこりが小さかったり、しこりの表面がかたかったり動く場合など、しこりのサンプル(組織)を検査で取り出すことが難しくなります。また、細胞診・組織診の結果を解釈することが難しい場合があります。

また、まれに、細胞診・組織診の結果、悪性とまではいえない「灰色」といった結果のものもあります。ふつうは「良性」か「悪性(がん)」か、「白」か「黒」かはっきりとわかるのじゃないか、と思っておられるかもしれません。しかし、そうではないこともあります。世の中見渡してもおわかりのように、そう単純にいかないこともあります。

では、そのような場合、どうやって「良性」か「そうではないもの」かの判断をするのでしょうか。このような細胞診または組織診でどうしてもしこりの性格を決めかねる場合には、しこりを部分的に切開あるいは全て切除して、病理診断をすることになります。

「私は細胞診の検査だけを受けたけど、知り合いのAさんは組織診(針生検)を受けたって言うし、それってどう違うのかしら」と思っておられる方もおられるかもしれません。

細胞診と組織診はどう違うのでしょうか。それぞれの方法を次に説明します。一般には麻酔が必要ではないので、「細胞診」を行ってみて、診断がつかないときに「組織診」を行うことが多いのですが、「細胞診」よりも「組織診」の方より確実な診断が可能なので、はじめから「組織診」を行う施設もあります。

病理検査による診断:細胞診

患者さんにベッドに横になっていただきます。しこりを手で触れながら、もしくは超音波でしこりを確認しながら、採血に使うのと同じくらいの細い針でしこりを刺します。しこりを刺したら注射器で吸引して、細胞を採取します。これが、この検査でとれるしこりのサンプルとなります。

一般に麻酔をしないで行うことができるので、針を刺したときに少し痛みを伴いますが、特別な準備を必要とせず診察の場で手軽にできます。

細胞診の検査では、細い針を使ってしこりの一部を吸引するので、この検査でとれるしこりのサンプル(組織)は細胞がバラバラになって取れくるのです。

そのために、この検査でとれるしこりのサンプル(組織)を病理学的に診断する、つまり細胞のかたちや性質などを判断することは、後で述べる組織診と比べると難しい面があります。

また、しこりの全てががん細胞からできているのなら、どこから細胞をとってもがん細胞がたくさん取れるので、診断はそう難しくはありません。しかしながら、「硬がん」というタイプのがんなどは、がん細胞の割合が少ないことや細胞のかたちが正常細胞と見分けにくく、なかなかがんと診断されないことがあります。

さらには、腫瘍の種類によっては、診断自体が非常に困難なものもあります。例えば「乳頭腫」というしこりは、細胞診はもちろん組織診でも診断がむつかしく、がんとの鑑別は手術が終わってみないとわからない、場合によっては手術の際に摘出した組織(標本)でも良性・悪性の鑑別が難しいといった場合さえあります。

また、「線維腺腫」という若い女性に多く見られる良性のしこりでは、細胞診ではまれに病理学的に「悪性」という結果がでることがありますので、その診断には注意を要します。

また、授乳中の場合にも、診断が難しくなります。

マンモグラフィや超音波検査の結果ががんに特徴的で、細胞診の結果も「悪性」だった場合には、「乳がん」という診断でまず間違いがありません。

ところが、細胞診が「悪性」という結果でも、マンモグラフィや超音波検査が典型的ながんの結果をしめさない場合には、細胞診が間違っている可能性についても考えなければなりません。

病理検査による診断:組織診

局所麻酔を行い、細胞診で使用する針よりも太い針を使ってしこりの組織をとってくる「針生検」と、特別な器械で組織をとってくる「マンモトーム生検」があります。

これらの検査では、小さいながらもしこりの組織をそのままの状態で検査することができるので、細胞診よりも診断がよりはっきりとします。

この検査は、患者さんにはベッドに横になってもらい、まずしこりの周囲に局所麻酔をします。そして皮膚に数mmほどの小さな切開(切り傷)をいれます。この切開創(切り傷)はしばらく(数週間~数ヶ月)するとほとんど目立たなくなります。

しこりを手で触れながら、あるいは超音波装置でしこりを見ながら、針でしこりを刺して組織を採取します。通常は外来で検査を行いますが、気胸などの合併症がおこった場合には入院を要することがまれにある、とされています。